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経営者の破産後の生活イメージ

カテゴリ
2013/11/27(水) 16:16:42

1.破産手続き後も保持できる財産

(1)債務の免責

会社は,破産手続によって,最終的に法人格が消滅することになります。つまり,会社はなくなってしまいます。 これに対し,会社の経営者は,破産手続後も生活を続けていかなくてはなりません。そのため,破産手続の中で,債務の免責を受けることになります。これが,破産申立てを行う経営者にとって,まず達成しなければならない最初の目標といえます。

(2)自由財産の確保

ところで,破産手続は,簡単にいうと,破産する会社や個人の財産を換価,つまりお金に換え,これを債権者に平等に配当する手続です。会社については,全ての財産が破産管財人の管理下におかれ,処分されることになります。これに対し,個人は生身の人間ですから,一切の財産を取り上げてしまっては生活ができなくなってしまいます。そこで,個人については,破産手続開始後も,一定の財産を保持することが法律上認められています。これが“自由財産”というものです。

破産手続の準備段階において,この自由財産をなるべく多く確保できるようにしておくことは,経営者の再出発のために重要なポイントの一つといえます。ただし,このような準備は,慎重に行わないと,否認対象行為や破産詐欺等にあたり,免責の可否に影響するおそれもあります。免責が不許可となっては本末転倒ですので,自由財産をどのように確保すべきかについては,弁護士と相談して慎重に検討すべきでしょう。

※新得財産と狭義の自由財産

自由財産には,経営者が破産手続開始後に獲得した財産(“新得財産”といいます。)と,差押えの対象とならない財産(“狭義の自由財産”といいます。)があります。破産手続開始後に就職先が見つかった場合,そこで得た給料等は,新得財産となりますので,その全額を生活の再建のために使うことができます。狭義の自由財産には,生活保護受給権等がありますが,重要なものとしては,99万円までの現金が挙げられます。

2.換価の対象とされない財産

自由財産の他にも,東京地裁の運用では,一定の財産が換価の対象とされないものとされています。換価の対象とされない財産は,破産手続開始後も,管財人の管理下におかれないため,経営者が自由に利用できることになります。 東京地裁の運用で換価が不要となっている財産は,次のとおりです。

換価が不要の財産

  1. 99万円までの現金
  2. 残高が20万円以下の預貯金
  3. 見込額が20万円以下の生命保険解約返戻金債権
  4. 処分見込額が20万円以下の自動車
  5. 居住用家屋の敷金債権
  6. 電話加入権
  7. 支給見込額の8分の1相当額が20万円以下である退職金債権
  8. 支給見込額の8分の1相当額が20万円を超える退職金債権の8分の7
  9. 家財道具
  10. 差押を禁止されている動産または債権

これらのうち,2.については,口座が複数ある場合,一つの口座の金額が20万円以下であっても,他の口座との合計額が20万円を超えると,全ての口座が換価対象となりますので,注意が必要です。

また,3.についても同様に,保険契約が複数ある場合,一つの契約の解約返戻金見込額が20万円以下であっても,他の契約の解約返戻金見込額との合計額が20万円を超えると,全ての契約が換価対象となります。この点,生命保険は,一度解約すると加入が難しくなりますので,解約されないようにしたいというご要望が少なくありません。

そこで,解約返戻金見込額が20万円を超える場合には,その見込額と同額の現金を上記1.などから調達し,管財人に納めることで,生命保険を換価対象から外してもらうということができます。簡単にいうと,解約返戻金見込額の代金で,本来取り上げられてしまう生命保険を,管財人から買い取ることができるということです。

3.自由財産をなるべく多く確保するには

換価されずに保持できる財産は,概ね,99万円以下の現金と,評価額が20万円以下の資産ということになります。

このように,現金は保持できる金額が他の資産よりも多いため,まずは,なるべく現金を99万円の枠内で多く残せるよう準備されるのがよいでしょう。例えば,預金や生命保険の解約返戻金が20万円以上ある場合,そのまま破産申立てをすると換価対象となってしまいますので,現金化してこの枠を有効に使うことで,より多くの財産を保持できることになります。

ただし,東京地裁では,直前に生命保険を解約して現金化すると,申立時には現金の形をとっていても,実質的には解約返戻金債権と同一であるとされるケースが多々あります。その場合には,管財人を通して,その分の現金を財団に組み入れるよう要請されます。

そこで,破産申立てを検討するにあたり,まずは評価額が20万円以上の財産があるかどうかを確認し,ある場合には,99万円の枠内により多く収まるよう,相当期間前から現金化しておくことが肝要です。どの程度の期間をおけば大丈夫かという点は,ケースバイケースで一概にはいえません。ただ,申立時までの期間と現金化の際の事情を総合的にみて,“財団に組み入れるのを阻止するため”というのが主な目的で現金化したのだと判断されないようにするよう準備するとよいでしょう。

4.申立後の収入について

最大限自由財産を確保できた場合であっても,その総額は,せいぜい当面の生活を維持するのに足りる程度です。 そこで,将来的に安定した生活を再建するためには,破産開始決定後,なるべく早く収入が得られるように準備をしておくことが重要となります。特に,会社の経営者については,サラリーマンとは異なり,破産申立てによって収入の元となっていた会社がなくなってしまうのですから,予め申立後の収入源の確保の目処をつけておくことは必須といえます。

この点,これまで扱ってきた事案をみると,親族や会社の取引先等の会社に就職するというかたちで,申立後の収入源を確保するケースが多いように思われます。ここで前回までの復習になりますが,破産手続において換価の対象となる財産は,破産開始決定時の財産に限られ,それ以降に得た財産は,新得財産として,破産者が自由に処分できます。そこで,上記のように,縁故採用が可能な場合には,就職の時期についても融通が利くことが多いため,申立前の自由財産の枠がいっぱいなっているような場合には,破産申立後に給与がもらえるよう調整しておくことで,より多くの財産を確保することが可能となります。

具体的には,破産者が現金99万円,預金20万円を持っている場合,破産手続開始決定前に30万円の給与を受け取ると,手渡しであっても,振込であっても,全額が換価対象になってしまいます。そこで,就職の時期を遅らせ,開始決定後に給与を受け取り,新得財産とすると,全額を保持できることになるというわけです。

すぐに就職先が見つかるケースでは,このような問題が生じますが,そうでないケースでは,生活が立ち行かなくなるおそれもあり,悩みはより一層深刻です。 このような場合には,就職先が見つかるまでの間,生活保護を受給することをお勧めしています。病気でも高齢でもない方であっても,当面の生活を維持するためということであれば,生活保護の受給決定がもらえるケースが多いように思われます。

そして,生活保護を受けていると,法テラスの法律扶助を使うことで,破産申立の初期費用を大幅に減らせるというメリットもあります。

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