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代表者の会社に対する貸付金は、破産手続において配当を受けられるか

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2016/03/18(金) 14:13:22

会社を破産させる際、同会社代表者を含む経営者一族の方々が、事業資金として自らの資金を貸し付けた等の理由で、会社に対して多額の債権を有している場合があります。この場合、同会社代表者を含む経営者一族の方々は、形式上、会社に対する債権者になりますから、同会社の破産手続において、同会社の資産より配当を受ける権利を有しています。

しかし、その他の債権者からすれば、自ら会社を倒産させておきながら、同社の資産に対して配当要求をするなど、不届き千万である、との思いが強いのは当然かと思います(現行破産法立法当時には、会社役員や経営者一族の方々の有する会社に対する貸付金等の債権を、劣後債権にすべきとの意見もあったくらいです。)。もっとも、現行破産法上は、破産会社の代表者であったり、経営者一族であったりするからといって、これらの方々を配当手続から除外することはできません。すなわち、他の債権者と同様に配当手続に参加し、破産会社の資産より、自らの債権額に応じた配当を受けることができるのです。

ただし、実務上、破産管財人が、破産会社の代表者や経営者一族の方々に対して、会社に対する貸付金債権を放棄し、債権届出の取下げをするようにと説得することはまれではありません。そして、破産会社の代表者や経営者一族の方々が、この説得に応じず、会社に対する貸付金債権について債権届出を行った場合には、破産管財人は同貸付金債権について、すべての債権者間の実質的な衡平を図るため信義則又は権利濫用の法理(民法1条2項、3項)に照らし、債権調査期日において異議を述べることもあります(「戦略的異議」と呼ばれます。)。

どのような場合に貸付金債権の行使が信義則又は権利濫用の法理に照らし違法となるかは、一概に言うことはできませんが、破産会社との関係、破産会社の事業経営に対する関与の仕方・程度等の事情を総合的に考慮し、判断されることになります(破産会社の代表者や関係者に対する権利濫用の抗弁を認めた裁判例として、広島地裁福山地判平成10年3月6日があります。)。

もっとも、破産会社代表者の方も、破産会社と同時に破産手続開始の決定を受けている場合には、同代表者の方の破産会社に対する貸付金債権は、同代表者の方の破産財団を構成し、同代表者の破産事件における配当原資にもなりますから、このような場合には、通常、破産管財人は異議を述べることはありません。

以上のように、破産会社の代表者や経営者一族の方々が、自らの破産会社に対する貸付金について、債権届出及び配当要求をすべきかは、複雑な判断を要しますので、申立代理人とよく相談したうえ対応した方が良さそうです。

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