破産管財人は、裁判所から選任され、裁判所の監督の下、破産財団を管理し、換価手続を行う一方、最終的な配当を行う相手方である債権者の権利内容を調査、確定し、破産者である会社と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって会社の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図る役割を果たします。破産管財人の資格に法律上の定めはありませんが、実務上は、破産実務の経験が豊富で当該破産事件と利害関係のない弁護士が選任されます。以下,破産管財人の権限・業務等について解説します。
破産管財人との打ち合わせ・面接
東京地方裁判所では、申立後、破産管財人選任までの期間に破産者と破産管財人候補者との間の打ち合わせを求める運用がされています。申立後、破産者・申立代理人・破産管財人候補者の3者で、通常は破産管財人候補者の事務所等で、申立代理人からの口頭での引継、書類副本の授受等が行われます。また、鍵、会社代表社印、預貯金通帳及び有価証券類等の貴重品、賃貸借契約書をはじめとする重要な契約書類、手形帳・小切手帳及び決算書類等の重要書類等はこの段階で破産管財人候補者に引き継ぐのが一般的です。
破産手続開始決定後も必要に応じて破産管財人とは協議、面接を行っていきます。
破産管財人に対する説明義務
破産者(会社そのものはもちろん会社代表者の他、取締役等も含みます。)には、破産管財人に対する説明義務があります。破産管財人に対して、破産財団に関する情報、その他一切の破産管財業務のために適切な情報を提供しなければならず、また、その説明義務違反は免責不許可事由になり、説明を拒んだり偽りの説明をした場合には刑事上の処罰があります。当事務所にご依頼頂いた場合、申立段階から複数の弁護士で事案処理にあたり、破産管財人への円滑な引継を行うと共に、申立後も、破産管財人と協力して適切な管財業務の実現に努めます。
郵便物の回送・開披
破産手続開始決定後は破産財団に属する資産、債権債務関係の実態把握のために有効であることから破産者宛の郵便物は全て破産管財人に配達されます。そして、回送された郵便物は破産管財人がこれを開披し、破産財団に関するものであるかどうか内容を調査します。
財産状況調査への協力、財産処分
破産管財人は、就任後直ちに破産財団に属する財産の管理に着手します。そして、破産者、代理人、破産する会社の取締役等は破産管財人に対する説明義務があります。また、破産者はその重要財産の記載した書面を裁判所に提出して重要財産を開示する義務がありますが、破産申立時に資産目録を提出するため、改めて重要財産を記載した書面を提出することは通常ありません。
破産管財人は、破産者の申告に加えて、帳簿書類・決算書の精査、郵便物の開披・点検を行い、破産財団に属する財産を確認しその売却等を行って破産財団の増殖を図ります。破産者及び申立代理人としては、特に時間の経過により財産価値が劣化する恐れのある在庫商品や、保管費用がかかる動産等がある場合は積極的に破産管財人に申告し、破産管財人の財産処分に協力します。場合によっては、破産手続開始決定前(破産管財人選任前)であっても破産管財人候補者と相談の上、財産処分を実施する必要があるでしょう。このように、適切な時期に適切な財産処分が行われることは破産財団を増殖させ、ひいては債権者全体の利益につながります。
以上のような財産処分に破産者の従業員の協力が不可欠であれば、破産手続開始決定後も継続雇用し破産管財人の監督の下で売却先の選定に従事させることもあります。一度解雇した場合でも、破産管財人の補助者として選任する場合もあります。
継続的契約関係の処理
電気、ガス、水道等の継続的給付を目的とする双務契約や、賃貸借契約については、営業継続または残務処理のために必要であるため、破産申立前に解約しないこともあります。事業継続中の会社が破産申立てをする場合、申立前の段階で継続的給付を解約すべきかどうかは、営業継続の可能性、破産管財人の財産処分を見据えた残務処理の見通しといった点を考慮して慎重に判断する必要があります。
破産管財人に債権届出を提出
破産手続開始決定は各債権者に通知され、各債権者は、破産管財人宛に債権届出を提出します。破産管財人は、届出された債権について、会社、取締役、場合によっては元従業員に事情を聴く等して随時債権調査をします。破産者はもちろん申立代理人もこの調査には積極的に協力します。破産手続開始決定後の破産者に対する郵便物は破産管財人宛に届きますから、破産手続開始決定の時点で知られていなかった債権者が判明するケースもあります。この場合、破産管財人は、新たに知れた債権者に対して速やかに破産手続開始決定通知を発送します。
破産管財人の権限(否認権)
否認権とは、破産手続開始決定前に、破産財団を構成する財産を不当に減少させる行為が行われた場合や債権者間の衡平を害する行為が行われた場合に、その行為の法的効力を破産財団との関係において失わせ、一度は失われた財産を破産財団に回復することができる権利をいいます。
破産者は、破産手続開始決定前は財産処分や債権者への弁済を自由に行うことができるのが原則です。もっとも、破産手続は一般債権者に対して衡平な弁済を得させることを目的とする手続ですから、破産管財人に否認権を与え、財産の廉売、隠匿、無償譲渡等の財産流出行為や特定の債権者だけを優遇するような弁済の効力を失わせる権限を与えています。
どのような行為が否認対象行為となるかについては、法律的な解釈も多分に含むため、危機的状況にあり、会社破産を検討しなければならないとお考えの場合には、財産処分、弁済をする前にまず弁護士に相談することをお勧めします。
破産管財人のその他の行為
破産管財人の就任後、債権者集会までの間に行う業務は上記のものに限られません。破産開始決定前になされた差押えについては執行取消しのための手続を行うこと、訴訟が継続している場合には中断後の訴訟を承継すること、財産保全のため必要があると認めるときは、対象物件の封印執行を行うこと等、多岐にわたります。いずれの手続も破産者と申立代理人の真摯な協力が必要不可欠です。
破産管財人との面談、権限についてはいかがでしたか?
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